「とりあえず、ひと通り話させてもらうと。こないだの合コンのあとから、あんたシノとも電話で話すようになってるでしょ」
「しの?」
「坂田紫乃」
「ああ。坂田さん。そうだな。言われてみると。それなりに」
小杉ついでに、麻祈は坂田について、キャラクターを反芻した。はぐれ日本人旅行者。やや内向きで自罰的な傾向は見受けられるが、芯はしっかりとしていて論拠に基づいた意見も持っているようだ。それを知った今となっては、ハニワっぽいとの例えは不適当だろう―――ハニワは中身ががらんどうなのだし……
「んで、例の派手カラフルな人が、この泥棒猫がって紫乃に食って掛かってる。恐らくは、そんな今この時」
「それこそどうしてそうなる!?」
.
ハニワから泥棒猫に化生(けしょう)されてはさすがに堪らず、がばっと身体を持ち上げて叫ぶのだが、佐藤の表情は微動だにしない。半眼に占める黒目の面積さえ、これっぽっちも増減しなかった。必要ないからだろう、ただ淡々と事実を述べていくのには。
「坂田紫乃は、あたしの友達って言ってたでしょ。もうひとり高藤華蘭(たかとうからん)って友達がいんだけど、そいつの前の職場仲間が例の派手カラフルな美女で、うっかり華蘭づたいに情報が伝達されたらしい。ついさっきの誰彼との電話の応酬をまとめると、そんなとこ」
「情報の伝達? だったらホウ・レン・ソウを遵守し正確にお願いします!」
「だからこうして報告・連絡・相談してんじゃん」
「俺らじゃなくて、あっちがしないと意味無いだろ!」
「ちゅーことは、濡れ衣だってか?」
「塗れ? ギ―――なんだって? 義務? ズリ足野郎(gimp)?」
「ええと。あんたはこれをクソたわけの戯言だって見なすわけだ(Do you consider her view as cock-and-bull story?)?」
「見なすもなにも(Don't I, just!)! 無論・当然・当たり前(Abso-bloody-lutely!)、だー(Duh!)! 」
[0回]
PR