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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「熱いので気をつけて下さいね」

 それだけで終えると、傍から退いた。

 身体をひねるくらいの動作で、すぐそこのベッドの横腹に腰掛ける。ぎし、とベッドの鉄骨の関節が軋んだ。いつものことらしく、麻祈は平然として座り直しさえしない。平然と。

 せめて、自分もそれを装わないといけない気がした。腹の前に寝かせていたショルダーバッグを、椅子の背もたれと背中の間に回してから、ぎくしゃくとコーヒーカップに目を留めて……

 麻祈の手元には、それがないのに気付く。

 紫乃は、テーブルから麻祈へと身体の正面をずらして―――とはいえ真正面に向き合う度胸なく、その十センチか二十センチか隣にいる人を見るような感じで―――、気まずく口を開いた。

「あの。麻祈さんは、なにも召し上がらないんですか?」

「え?」

「その。お飲み物」

「いえ、お気になさらず。どうぞ」

 まるで紫乃の杞憂を払うかのように片手を顔の前で振り、麻祈が続けた。

「俺、今、茶碗でも飲みたいと思うほど、喉は渇いていませんから」

「茶碗?」

 はたと、疑問に思う。こちらに出したコーヒーカップがあるのに、どうして茶碗で飲むなんて話になるのか分からなかった。

 そんな紫乃こそ不可思議だと言わんばかりに、麻祈もまた首を傾けてしまう。器用なことに、そのまま頷いてくる。

「? はい」

 となるとやはり、彼は茶碗でしか茶を飲めないらしい。

(なんで?)

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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