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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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.玄関に大人ふたりは納まらないので、麻祈が先にドアを押しのけて外に出ていた。廊下の電灯を消した紫乃が出てくるのを待ってから施錠し、来た時と同じ動線を下っていく。廊下から、階段へ向かって。

 大きなサンダルは、一歩を踏み出すごとに踵がスイングした。どうしても歩速が落ちて、歩調が乱れる。建物への吹きつけ方によって濃淡が変わる風の音、それに負けず劣らずの乱れ調子な足音が目立つ。

(うああ、歩くのさえちゃんと出来てないみたいで恥ずかしい……)

 美人ていうのは、足音まで美人なのだと思う。立てば芍薬・座れば牡丹・歩く姿は百合の花と言うくらい、それは大昔からの事実で、美人は発するすべてが綺麗なんだな、と思う。爪の垢でも煎じて飲めというのも、そういうことだ……美しいものにカスはないのだから、お前のようなものは無駄にしないで肖(あやか)っておけと。

 足音は、前を行く麻祈にだって、きっと聞こえている。どうしても、比べてしまう。不恰好に引きずって、みっともない足音―――

(―――あれ?)


紫乃は、コンクリートの廊下を行く自分のつま先から顔を上げた。こちらのペースにあわせて、ゆっくりと数歩前を進む、麻祈のスニーカーの踵を注視する。暗くてあまり見えないが、よく目を凝らすと、靴底の磨耗に左右差がある……そして、よくよく気をつければ、そこから聞こえてくる靴の音にも。そっと、そこに耳を澄ましていると―――

 声が聞こえた。ような。

「え―――麻祈さん、なにか言いましたか?」

 一拍の、間。

 振り返らないままの彼から、返答がやってくる。

「歩きづらいですよね。かわいそうに。すぐ近くですから。駐車場」

「はい……」

 なんとなく気まずくなって、紫乃は詮索をやめた。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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