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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「え?」

 信じられず、紫乃は声を上げた。上野は、まだ身じろぎすらしない。顔はのっぺりと無表情。変な手先の横向きの寝相で、呼吸を繰り返しているだけだ……だけで、いい。麻祈はそう言うが。

「脈とかみたり、人工呼吸とか心臓マッサージとかはしなくていいんですか?」

「このケースでは不要でしょう」

「そ、そうなんですか。はー」

 天井を仰いで、大息を吐く。

 手がこっていることに気付いて、紫乃は携帯電話を持ち変えた。

.
居間と開口したドアから差し込んでくる夕陽に熱(ほて)らされた肌に、乾いた汗の感触を思い出す。そうだ。嫌な汗を、あんなにもかいていたのだ。自分は。……

「とは言え、観察を怠らないで下さい。妙な呼吸をし出したりしないか、救急車が来るまで―――」

「きゅっ」

 固まる。まさしく、心身ともに。きゅっと。

 そして、その堅牢な金縛りをもぶち破る衝撃に脳天まで劈(つんざ)かれ、紫乃は絶叫した。

「忘れてた!!」

「え?」

「とにかく誰か呼ばないとって思ったら、お医者さんの葦呼しか思い浮かばなくって、葦呼に繋がんないってなったら麻祈さんだけで頭がいっぱいに……!!」

 手が震える。体幹から戦慄く。涙が浮かんだ。どうにもできない。もう、どうにもできない。過去だって取り返しはつかない。履歴書に不採用と打たれた自分は駄目だから、救急車だって呼べていなかった。こんな紫乃だから、役立たずだから、救急車なんか思いつきさえ―――

「そうなってしまったんですね。ええ。きっと、そうでしょうとも。そうなってしまいますよ。それで、いいんです」

 麻祈の声がした。見下げ、罵り、否定を繰り返す自責の坩堝に。

 縋りついてしまう。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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