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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「両者の姿勢は?」

「上野さんは、廊下に倒れています。横向きに。トイレの出入り口のところで。わたしは、そこから少し離れたところで、へばってて」

「他に協力者は?」

「麻祈さんしかいません」

「こちらこそ坂田さんしかいません」

 それを、告げられた。

 だけでは、なかった。

「どうぞ、よろしくお願いします」

.
「……こちらこそ、よろしくお願いします」

 こたえる。

 そうしたならば、そうするのは、やはり言葉だけでは済まされない。

 沈着していた体内に、熱を感じる。熱とは、発散を待つ力だ。どうしたらいい? これを、どうしたらいいのか? ―――

「対象者を、仰向けに寝かせることは出来ますか?」

「します」

 紫乃は動いた。腰が抜けているから、立ち上がると転んでしまうかも知れない。両腿と片手を総動員して、上野へと這いずる。頭蓋の間近まで 近寄っても、上野は微動だにしない。

 片手で、彼女の上腕を掴んで引っ張ってみた。腕の位置は変わったが、弛緩した数十キロの肉塊本体は動かない。両手を相手の腋に引っ掛けて、力を込めて引きずらなければ。

 携帯電話は、肌身から離したくなかった。襟ぐりからブラジャーに突っ込んで、上野の腋下に手をかける。力を込めた。咽頭で息が破裂する。

「ふ、ンぎっ……―――!」

 三回に分けて、上野を廊下に引きずり出した。ごてりと上向きになった上野は、それでも人事不省だ。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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