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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「ひッっ」

 息を呑んで、それを肺臓から搾るまでの数秒。

 その間に、それが首だけでなく、胴体と連なっていることを理解する。上野は、床に横倒しになっていた―――トイレの個室から肩口を飛び出させるかたちで、こちらに顔面を向けている。一瞬でも首だけかと思ったのは、その構図と、首まわりを縁取る長い髪によって、蒼白の細面だけが際立って見えたせいだ。実際、居室の暗がりと暗褐色のトレーナーを着た上野は、蜃気楼のように、顔だけが浮世離れして見える。

「うえ、の、さ」

 尻から太腿にかけて質量を感じてから、紫乃は自分が床にへたり込んだのを自覚した。ぶるっと震える。悪寒を感じた。それは、床の冷感によってか? まさかの霊感によってか? よもや、尿意のそれなのか? 漏らしちゃ駄目、こんなとき漏らしちゃうとは聞くけど駄目だから。だから。それだから。漏らさない以外は、どうしたらいい?

.
どうすればいい? どうしたらいい? こんな時って、どうしたら助かるんだっけ? ちびっちゃって、そっと背後に犯人が現れて、自分が第二の被害者になる前に、どうしたらいいんだっけ? 違う。そんなのサスペンスドラマじゃないか。上野が生首じゃないなら、それを助けてくれるのは医療ドラマじゃないか。医療―――医院―――医者。医者!

(いこ)

 紫乃は、ポシェットから携帯電話を探った。

(たすけて。助けて。葦呼。助けて)

 目は、上野から離せなかった。だから、片目の前にまで携帯電話を持ち上げて、タッチパネルに触れていく。音声発信したい……通話履歴から佐藤葦呼を見つけてリダイヤルするのなんか、いつものことなのに、がたがたと震える指先から、パネルが余計な動作まで感知してしまう。

 どうにか操作を終えて、それを耳元に運ぶ。

 声が聞こえた。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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