「ヘラヘラうだうだトロトロしてるだけで可愛がってもらえるオコボレ人生歩むのはあんたの勝手だけど、それがムカつく人の迷惑とか考えたことあんの!? 無いでしょ無いからこそそんなのでいられるんでしょ! 現にこーやってここまでムカついてんの言ってやってんのに、ぼけーっと居直りやがって! 聴覚まで馬鹿!? まるごと馬鹿!? 陰気で根暗なだけでも勘弁してほしいのにネチネチと粘着系馬鹿!? キッタネェ。菌じゃねぇのマジ? ああああぁぁアああああ!!」
上野が、平手で床を殴りつける。それを続ける。そして喋り続ける。攻撃欲を宿した双眸をぬめらせながら、泡と悲鳴を飛ばしていた。
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「あー吐く。キモい。うるさい。カンカンカンカン階段上がってくる音もコツコツばったんする周り中の奴らも股がそのうちグリュブミュグチュヌチぬるぬるするのもウザぁい。なんでよぉ。なんで、あたしばっかり毎月毎月毎月毎月、生理前こんなになんのよぉ……やっぱり鉄剤なんかじゃ治んねーじゃん……―――そんなん健診受けた時から知ってるっての。知ってるから、今日だってずっとこうやって篭もってたのにさぁ。電話も切ってさぁ」
上野が、床への殴打をやめた。
その手で身体をつっかえて、ゆっくりと頭をもたげる。ばさばさに乱れた長髪の影から垣間見える目玉は血走って般若のようだったが、顔つきはぼんやりと我を失っており―――
だからこそ、紫乃への純粋な悪感情が、透けて見えた。
「なのに。なに存在してんの? ここに。こいつ」
と。不意に上野の指が、紫乃へ伸びた。絞め殺されるかもしれない。思いはするが、どうでも良かった。
そんな紫乃の肩を、彼女は突いた。突き飛ばしたつもりだったのかも知れないが、そこまで出来る力を取り戻せていないのだ。そうやって、口を開く。
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