「出・て・け」
 ひっこめた手を不潔なもののように服の腹になすりつけながら、上野が唾棄した。
「出て行けよ。どぉせまた馘首(くび)なんだよ。どれだけ医者に言われたとおり寝て食べて身体あったかくして薬飲んでも、毎月毎月こうなんだから今回だってそうなんだ。金曜日に早引けさせられちゃったってことは、もうきっとまた馘首だってもう決まってんでしょォがア!!」
 せりふの消沈など無かったかのように、彼女は再び怒号を上げる。
「だったらわたしももうすぐこの部屋出てかなきゃなんないんだから、あんたもさっさと出て行って!!」
 そして身体を丸め、声を上げて泣き出した。
 上野は、立てた膝の間に頭を突っ込むような格好で、号泣している。
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