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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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掲載ポスター:某店の玄関ガラス戸にて↓
「―――うわぁ、ほんとうに、ぼくのだぁ」

「だから、おかあさんが言った通りでしょ。こないだ県に応募した、まこっちゃんの『たいらげろん』の絵がポスターになったから、みんなに見てもらえるよって」

「……金もねぇのに外食なんて……しかも、近所だからとはいえ、酒を出すような店に子どもを連れ込むのは……大体にして、こんな小さい内に得体の知れない原材料の外食産業もんを食わせるとか(ぶつぶつ)……」

「馬鹿言ってんじゃないの、おとうさんのくせして。
 お金はこれから稼げる。お酒はこの子には飲ませなければいい。食べ物は、あとでじゃんじゃん日本産を食べさせて無効化できる、けど、真言(まこと)の絵がポスターになってバーンと張り出されてるのは、今この時だけだよ。
 県が推進だって胸を張らなくなったら、あっという間にオジャンなんだから。ジャポーンの流行の世知辛さをナメんじゃないよ」


「……また随分と、熱の入った言い方だな」

「うん。こないだオタク会で、なんでか数学じゃなくてフランスあたりの学校教育について話が及んだんだけどさー。
 やっぱナマの見聞きから言われるとグサッとくるモンあるわけよ。あいつが言うとこの、生粋ジャップとしては」


「オタ……って、お前それ、まさか例のあいつと―――」

「およ? 例のあいつとしかオタク会しないけど。なんか問題あんの?」

「……とりあえず、もう二度と我が家のベッドに連れ込むんじゃない。
 目が覚めた時にお前じゃなくてあいつが横で寝てた朝を思い出すだけで虫唾が走る……」


「だぁからー。あれは不可抗力だってー。大の大人に『ひとりで寝たくない』とか駄々こねられたら、こんなちっちゃいあたしじゃ諌めらんなかったんだよー。あいつゲイでもないし、個人主義で養われた倫理感は日本人より信用できるくらいだし、問題ないよー。あの年代の帰国子女の四方山(よもやま)話なんて、ものすさまじくタメになるしー」

「問題が起きる起きないじゃなく、妻の手によって見ず知らずの野郎と同衾(どうきん)させられたこと自体が問題視されるべきなんだよっ! あほたれっ!」

「ねえねえ、―――あっちのもこっちのも、ぼくの『たいらげろん』だよ(´ロ`)!」

「うん。それもこれも、全部まこっちゃんの『たいらげろん』だねぇ。
 うわあ。
 いいなぁ。
 ありがとう、うれしい。
 見れば見るほど、まこっちゃんらしいのが、とってもいいねぇ」


「おとうさーん! おかあさんがね、ぼくの、ぼくの……あのね、うんと。とっても、いいんだって(´ロ`*)!」

「……ああ、良かったな。真言(まこと)。
 今日は、お祝いにお腹いっぱい食べて帰ろうな」


「え!? いいの!?」

「えー、いいのぉー? うりうり」

「ええい。からむな、にやにやと。そして肘で小突くな。
 ―――いいんだ、今日は。
 ……今日だからな」


「おっしゃ。
 まことー。おかあさんとおとうさんと、夜更かししてパフェまで食べて帰ろ。まこっちゃんの大好きなイチゴがいっぱい乗ってるやつ。おかあさんの分も、イチゴ食べていいからね」


「やったー!
 たいらげろんありがとー。たいらげろんのおかげで、ぼく今日パフェなんだよー。なでなでー」

「うう。ナチュラルいいこ。どうしてあたしの股から出たの?」

「まさかそれ俺に訊いてないだろうな?」

「おとうさん、おかあさん、はやく、お席つこう!」

「じゃあはい。家族でしゅっぱつしんこー曲。
 つーなぎましょ、つっなぎっましょ♪ みーぎのおてては、」


「おかーさん♪」

「ひ・だり・の・てっては、」

「おとーさん♪」

「「「あーるきましょ、あるきましょー♪ オイシーごはんがまっているー♪」」」

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「―――あ。アサキング、しらが発見」

「おー。俺の毛根も、ついに色素を作れなくなる奴が出たかー。オツトメご苦労さま。
 佐藤は、全然しらが無ぇのなー。それとも染めてんの?」

「茶髪も癖っ毛も地だよー。あたし黒目も茶色っぽいし。薄いんだ、そもそもの色が。
 まー、どーせしらがになるなら、若いうちになりたいもんだけどね」

「? そうなのか?」

「若しらがは幸せになるってジンクスあるじゃん」

「……どう言う意味だ? それ」

「幸せな若者時代のまんま、頭まっしろけの年寄りになるまで行けるぞってことでないの」

「いや、そうじゃなくて。お前今、Jinx って言った?」

「言った」

「幸せになるのが呪われた巡り合わせって、どーいうこった?」

「およ?」

「……またか。これ。
 あーめんどくせー」

「となると。本場じゃ、ジンクスって、呪われた巡り合わせって風に使うの?」

「ああ。縁起がいいとか、幸先がいいとか、吉兆だとか、ンなことにゃあ使わねー。
 その、ちょうど正反対の時にだけ使う」

「へー。具体例は?」

「好きなサッカーのチームが連勝してる時に、それを大っぴらに口にしたりしない」

「? 自慢してると、疫病神が鼻っ柱を折りにくるってジンクスでもあんの?」

「うーん。合ってるよーな違ってるよーな……
 あっちじゃ、成功続きなのは次に失敗する巡り合わせだからだって考えるんだ。『うまくいきすぎなのは、大コケさせるための運命の罠』とでも言おうか……
 だからサッカーチームの連勝を口にすればするほど、次は負ける予感が強まるみたいだぞ。
 最近の体調とかでも、うっかり『こわいくらいうまくいってるじゃん』って褒め方すると『言うなよ、マジ勘弁』って窘められたりする」

「ほうほう。興味深し。
 大人になってもそうなら、子どもの頃から染み付いてる文化なんだろーね」

「ああ。子どもは Jinx 遊びするからな」

「ジンクス遊びとな?」

「いやまあ、遊びじゃなくて真面目にやってるとも限らんけど。
 子どもにとっちゃ『 Jinx! 』は、友達同士でせりふがハモってしまった時にする厄払いの呪文ってのがメジャーなんだよ。「 Jinx! 」って先に言った奴が、言い損ねた奴に不運を押しつけることが出来るんだとさ。いち抜けたって」

「へー。日本にも、えんがちょってあるけどね」

「えんがちょ?」

「うん。厄払い。
 忌まわしいものに接してしまった場合に、両手のグーから立てた一本指の先っちょ同士をくっつけて、その接点を、誰かほかの子に切ってもらうの。二本指をナイフに見立てたポーズで、えんがちょって言いながら。
 指の接点ごと、厄とも縁が切れるってことじゃないかな。きっと」

「誰かに押し付けるだけタチ悪ぃなオイ。西洋」

「いや、えんがちょにもバリエーションあるから。今のは、某有名アニメ映画で流行したバージョンだよ。
 あっちだと、どんなシーンで繰り広げられるわけ? ジンクス」

「そーだなぁ。
 二人の子どもが母親になにか言われて、嬉しそうに「スーパー!」って口を揃えた途端に、一転して「ジンクス!」「ジンクス!」と喧嘩を始めたりとかかな」

「ふーん。厄のなすりつけあいだ」

「だな。まあ、「 Super! (やったぜ!)」にケチがついちゃたまんないだろうから、そりゃそうだわな」

「むう。あたしは意図せず、若しらがを不運におとしめるところだったのか。不覚!」

「―――あ」

「およ? どうかした?」

「佐藤。今キラッてした お前のそれ、しらがじゃね?」

「うはぁ! Jinx! よっしゃ、いち抜けたっ!」

「若かねーしガキでもねーしハモったのせりふじゃねーし、Jinx が入る余地ねーよ」

「うっさいやい。折角のイングリッシュ遊びの機会じゃー。付き合えー」

「いいけど、そしたら若しらがの幸運は俺がもれなくひとり占めだぞ」

「にぎゃー!」

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医療職にも、業界用語があるんだよー。
 癌(がん)
 →「クレブス」。これはドイツ語の Krebs の日本語読み。英語の Cancer や Carcinoma から、キャンサー、あるいはカルチって呼ぶこともあるよ。「胃カルチが~」って言ってたら、胃がんって意味になるね。

 メタ
 →癌って、別名「悪性新生物」って言うの、知ってる? どうして悪性新生物なのかってぇと、正常な人体にとって悪性を示す増殖を繰り返す生き物が、癌だからなんだ。破損した遺伝情報に沿って、トンチキな細胞分裂をしまくって、健康な肉体を侵してしまうイキモノってこと。若いうちは免疫が、そいつらを駆逐してくれるんだけど……
  そう。つまり、免疫が対峙しきれないくらい ぞくぞく増えた悪性新生物は、血流やリンパの流れに乗って、飛び火する。これが転移。Metastasis が語源だよ。
  「大腸と肺か。メタだ、こりゃ」ってのは、おおもとの大腸癌から肺癌が転移したって意味になるね(癌は発生部位によって、それぞれ転移しやすい場所があるんだよ。中でも肺は、転移先として重要。人間は肺呼吸で酸素を取り込んで全身に血液を循環させている、イコール、肺を通らない血液はほぼ一滴もないってことになるから、血流に乗った癌細胞がくっつける機会が他の臓器に比べて多いんだ)。
  ……あんまり聞きたくない言葉だなぁ。

 ひらく(開腹く)
 →開腹手術のことだね。オペ(手術の意、淵源は Operation)の一種だよ。医療ドラマで、メスでお腹を切開するシーンとかあるでしょ? あれあれ。
 「ひらいてやります」ってのは、「手術は開腹で行います」ってことになるよ。

 ラパる(腹腔鏡る)
 →腹腔鏡手術のことだね。これもオペ(手術の意、淵源は Operation)の一種。
  ラパは、Laparoscopic の略。テレビで見たことない? お腹に何箇所か切れ込みを入れて、機械の棒をそこから挿入して、かちゃかちゃ機械をいじってる場面。あれが腹腔鏡手術なんだよ。
  「ラパる」って使うよりも、「ラパ胆(ラパコレとも言う。腹腔鏡手術にて、胆のう摘出術を行うこと)」とか、「ラパ腎(腹腔鏡手術にて、腎臓摘出術を行うこと)」って感じで使うのが多いかなー。

 ケモ(化学療法)、ラジ(放射線療法)
 →悪性新生物を退治するのに化学薬品を使う方法がケモ(化学療法)で、放射線を使うのがラジ(放射線療法)だね。
  あたしらそのものが生物である以上、悪性新『生物』に効く療法は、正常な生体にまで効いてしまう。副作用ってやつだよ。白血病の治療で髪が抜けたりってのもそれに当たるね。
 「ケモラジでいきます」となると、「化学療法と放射線療法を並行して治療に当たりましょう」って意訳になるかな。

 ナートる(縫合る)
 →手術で切開した組織を縫い合わせること。
  ナートるって使うんじゃなくて、手術の難しいところを先輩がやって、それが終わったら「ナートは任せた」って後輩にバトンタッチしたりする場面の方が妥当かな。

 他にもいっぱいあるから、興味があったら調べてみてねー。

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「佐藤先生ぇー」

「これは橋元先生。こんにちは。ご無沙汰してます」

「こんちゃー。なんのなんの、こっちこそご無沙汰さん。元気そうでなにより。
 ところで、段先生のことなんだけどさぁー。佐藤先生に、彼のカノジョ面からの協力を、ちょっちお願いしたいんだけど」

「? 出来ることなら、喜んで。それで、一体どんな?」

「会話に横文字多いんだよねぇー」

「……あー」

「しかも音も使い方も、教科書なんぞなんぼのもんじゃいってな普段使いでしょ。
 その上、スラングや略語の使い方もごっちゃごちゃ。なおのこと通じないし」

「ですね」

「なんであそこまで英語抜けないの? もう10年くらい日本にいる筈でしょ? 彼」

「……多分、帰郷習慣のせいではないかと」

「へ? 帰郷?」

「ええ。オンライン帰郷。あいつ、いわゆるマウスポテトなんで。休みの日は海外の友人とメールやチャットで丸一日やりとり、なんてのもざら。
 英語の話し方が、地域も新旧も色々ごった煮なのもそのせいでしょう。ウェブ向こうの友人の癖に引きずられるんですよ。元から、各国ぐるぐる回って育ってる手前、適応能力ハンパないんだし。
 それに、『日本語のなまめかしいところは好きだけど、ちんたら回りくどいのは邪魔臭い』とか言って、読み込む愛読書は日本語だけど、ちゃっちゃと読み進めたい数学誌や読み捨て本は洋モノだし。洋画も字幕消してしけこんでるし。
 実際、休日に連絡したりすると、格段に英語が増えてますから。感情表現なんかもケバケバしく、あっち寄りになって。あたしも勉強になることが多くて、それを咎めないもんだから、なおのこと。
 気付いても良かったのに、今の今まで……申し訳ありませんでした」

「いえいえ……
 てか、段先生って、帰国子女でバイリンガルのくせして英語キライって話じゃなかったっけ? どっか海外の学会行った時に、ずっとダンマリ決め込んでたとか」

「そんな逸話が有名なようですね」

「……なに? 一人歩きしてるってわけ? 噂話が」

「とは言え、お口にチャックして南京錠をかけるがごときアンタッチャブルを剥き出しにするケースが絶無ではありませんし。そもそも、一人歩きを野放しにしているのは、あんにゃろの面倒臭がり根性。自業自得ですよ。
 ―――だからこそ、自分で拭ける奴の尻は薄汚れさせておいていいにしても、患者家族へのそれは見過ごせませんね」

「うん。ただでさえ病気かもって不安なとこに、医者の口から横文字出てくるとね。他意が無くても、他意を勘ぐらせちゃうから。
 お付き合いしてく中で補正してあげてくんない? 日本っぽく。発音でも使いどころでも、じゃんじゃん手当たり次第に」

「はい。留意のもと監督します」

「あと、方言も教えたげて。こっちは、体調不良や日時に関するものから優先して」

「承知しました」

「標準語には馴染めないってお年寄りも多いから、いつか話せるよーにならんもんかなぁ。方言。
 うーん。ペラペラなのが英語じゃなくて方言だったらバッチグーだったのに」

「ちなみに、わたしからもということは、橋元先生も既にご指摘なさったと言うことでしょう?
 それでも、助力を乞うなんて……まさか、反抗でもされたんですか?」

「いんや。疑問視された」

「と、言いますと?」

「咄嗟の英語なんてソーリーソーリーひげソーリーくらいで勘弁してって言ったら、なぜ整容行為を謝罪するのですか? って」

「あー広辞苑。あの広辞苑」

「でしょ。駄洒落も、彼の目録に入れたげて」

「努力します」

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ピーリングは、ナイフ格闘の技の一つだ。
 まず、なにもない平野で、knife(ナイフ)を1本ずつ構えた者2人が対峙した場面を想定してくれ。

 相手を殺傷するには、ナイフが届く範囲に行かないといけない(仕掛けナイフでもない限りは)。つまり短剣による攻撃は、相手に向けて腕を突き出すってスタイルがほとんど。

 あえてこの腕を狙う攻撃が、ピーリングだ。

 peel(皮を剥く)の意の通り、突き出された腕の表面を刃でなぞるようにナイフを滑らせて、表皮を削(そ)ぐ。百聞は一見にしかずだから、図解すると、こんな感じ↓
 致命傷ではなく、痛みによるダメージと出血による体力低下を狙った技だな。真綿で首を絞める系の。

 これを避けるには、突き出した腕を素早く引っ込めるしかない。ナイフは刃渡りが短いので、腎臓など重要な臓器を致命傷から守るために、中腰になって膝を曲げ、顔を相手に向けることになる―――相撲で、はっけよーい・のこった、の直後の姿勢だな。

 その格好で見合いながら、相手の懐に飛び込めるまで、グルグルぐるぐる回り合いながら、ナイフを突き出して・引っ込めてを繰り返す。

 言っちゃなんだけど、地味だ。

 映画でメインシーンを銃やミサイルに譲るしかねーのも納得だと思わないか?

 んじゃま、今回はこんなところで。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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