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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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 ギリシャ神話のナルキッソスは、湖面に映り込んだ自分自身に夢中になるあまり、死んでしまった少年だ。ナルシスという発音から、ナルシズム・ナルシストの淵源になってる。有名だよな。

 対するゴルディオンの結び目は、大昔のアレクサンドロス三世(アレキサンダー大王)の伝説だ。

 フリュギアという王国にある都市ゴルディオンにて、アレクサンドロス三世は、神殿に奉納されていたゴルディアス王の荷車に興味を持った。なぜならば、この荷車に作られた結び目が、「ほどいてみろ」って謎かけだったからだ。

 でもって、見てみると確かに、こんがらがった紐の玉。

 そこで王様は、紐の玉を、ざっくりと剣で一刀両断した。

 現代では、難問を意外なところからズバッと解決するって例え話で使われることが多いぞ。俺としては、似たようなことわざなら、コロンブスの卵の例えの方が好みだけどなー。物騒じゃなくて。

 意外なところから問答無用に強硬解決って意味じゃ、ゴルゴ13の方が別格かもしれんが……

 てなわけで、今回はこれにて。

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「―――ん? 佐藤。か?」

「うう……そーゆーあんたこそアサキング……なに? 『佐藤。か?』って。なんで疑問系?」

「いや。いつも飛んだり跳ねたりしてるのに、今日は機敏じゃないから。
 こーんな天気がいい道すがらで、塀(へい)に伝い歩きとか……らしくないにも程があるだろ。どうしたんだ? せっかくのアンニュイな雨の午後に、庭先で子飼いにしてるアマガエルが誰かに踏まれたっぽくヨロヨロしてるのを見かけたみたいな、地味にハラハラした気分に陥るじゃんよ。俺が」

「とりあえず、地味にでもハラハラさせたことに関しては、心配無用と言っておこう。そしてそれ以外の部分には、チキショーと歯を剥いてやる。ちきしゃー!」

「言った先から発音おかしくね?」

「ところでホッチキスをホッチキシャーって改名するだけで、とりあえず攻撃力2割増しだと思うんだよね」

「武器じゃなくて文房具だって前提を忘れないでいてくれるなら、紙への貫通力が増強されるのは喜ばしいことだから、歓迎して受け入れてやるよ。ホッチキシャー」

「およ。まじでか」

「まじでだ」

「おっしゃー! こうして我が信義への帰依者を得たからには、以降は二人三脚で、名の改変による潜在能力解放戦線を勝ち抜くべき! べきべき! ばきぼき!」

「いや。ぶっちゃけホッチキスからして英語じゃねーから、日本でどう和製化されてたって大差ねーし。俺」

「うはー! そんな投げやりな賛同と怠惰な同順なぞ、この佐藤葦呼の人倫の綱(つな)に委ねるまでもなし、天網恢恢疎にして漏らさ―――うっ! 足が……!」

「そのタイミングでそんな風に喝破を上げられると、悪役の俺が敵対する中ボスを暗殺した場面みてーだからやめてくんね?
 ……にしても、そのふらふら状態の、どこが心配無用なんだ?
 俺でよけりゃー診察と処方するけど?」

「いーのいーの。ほっときゃ治るからー。
 昨日、慣れないピンヒールの靴を履いて何時間か出歩いたら、ヒラメ筋から腰まわりまで、筋肉痛になっちゃっただけ」

「? ぴん・ひーる?」

「そ。カカトんとこが、超絶に とんがったハイヒール」

「……『 stilettoes 』だろそれ」

「え? なんだって?」

「だから。靴の種類。
 『 stilettoes 』」

「なにそれ。es ってことは、複数形なの?」

「そりゃそうだろ。人間なんてほぼ2本足なんだから、単数―――片っぽだけじゃ、靴として成り立たないだろ。
 『 stilettoes 』は『 stiletto 』の複数形だよ」

「むう。それなに?」

「小さくて細身の懐刀(ふところがたな)」

「え? それってナイフじゃなくて?」

「うーん。広義には『 knife 』の一種でいいんだろうけど、それよりも、もうちょっとイメージ狭まる。
 見た目は『 paper knife 』に近くて、こー、身の危険が迫ったら背広の内ポケットから取り出せて、グサッといけるよーなやつ。どっちかってーと刺殺向き。
 だから、そんなカカトした女物の靴のことを、『 stiletto heel 』って言うんだ。俗には『 stilettoes 』」

「へー。ピンヒールって、あっちじゃそう言うんだ」

「まあ、『 spike heel 』とも言うけどなー。
 大体にしてスパイクならまだしも、針( pin )じゃ、靴のカカトとしちゃ荷が勝ちすぎてるだろ。折れちまうだろ。女の体重でも、さすがに。
 ピンヒールって言ってて、妙だなーとは思わなかったのか?」

「えー。だって。ピンって『1』の意味かと」

「え? どーいったことだ? それこそ」

「昔の日本じゃ、ダイスを使ったギャンブルを、よくやってたの。一つのコップにダイスを二つ入れて振って、コップを取って表れた数字の組み合わせを当てるって奴。
 そんで、ダイスの数字の『1』のことをピンって呼んでたのさ。1がふたつ揃って出たら、ピンゾロって具合にさ。
 ひとりでお笑いやってる芸人のこと、ピン芸人って言うじゃん。あれと同じだよ。
 だから、長い1本足が目立つハイヒールのことを、ピンヒールって言うのかなあと」

「そもそも2本足したハイヒールなんか見たことないけどな」

「そういやそうだ。あれ? なんで?」

「知んねーよ。脚にまつわる女の美学なんて。
 1本で足りるから、2本3本って増やそうとするモノ好きがいないだけじゃね?」

「えー。脚は女だけの美学じゃないでしょー。
 某大統領(♂)なんて『わたしは女性の脚に欲情する』ってマスメディアの前で言っちゃって、国中が大騒動になったんだよ」

某大統領(♂)の美学だろそれはっ! 男性全員の基本属性にしてくれるなっ!
 ……にしても、お前が足元からオシャレするとはねえ。性別あったんだな、佐藤」

「オシャレっちゅーか、威嚇」

「へ? 威嚇? 誰に」

「主に父親。
 あたしがひとり暮らしし出してからの、不定期な恒例行事で。家族で、洒落た店で外食したんだけどさ。
 いっつも、なんやかやと差し金を入れたがるから、とりあえず身長差で歯向かっといたの。うち、どっちも背ェ低いもんでね」

「ほほう。効果は?」

「あんまし」

「総評結果は?」

「延長戦」

「へえ。勝敗つかなかったのか。そりゃあ疲労だけ残るわな。かわいそうに。大変だ。大丈夫か?
 俺が協力できることがあるなら、いくらでも言えよ。言うだけタダだからな。表面上は」

てことは裏ではツケにされてんのっ!?

「んけけけけ。咄嗟にツッコめるくらい元気なんじゃありませんかあ。僕チン安心ですうー」

「にゃろー! 振り回したところで鞄が届かねー! これ見よがしに小走りで間合いを取りやがってぇ!」

「そーんなヘロんヘロんのあんよじゃ追いついてこれまーい。ったく・どーにも・モノ足んねぇ(Boop Boop Bee Doop!)! 悔しかったら、ちゃきちゃき元気になりやがれーい」

「アサキングめーっ! 今に見てろ! 後日ピンヒールで枕元に立って踏んでくれるわー!

某大統領(♂)以上の誤解を買う絶叫を職場隣接地で上げんじゃねー!!


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サルモネラ菌は、おおまかに言うと、主に動物の消化管に住み着いては病原性を示す細菌だよー。



 消化管に住み着いている菌だから、消化管から排泄された糞便(や、糞便に汚染された土くれ・飲食物など)を経口摂取することで、発症するのが大半なんだ。

 菌を小分けしていくと、食中毒として胃腸炎を起こすやつ、パラチフス・腸チフスという重篤な疾患を引き起こすやつとかって分けられたりもするんだけど、あたしたちが日常的に耳にするのは前者が大半かな。

 たまごかけごはんに限った食中毒ってなると、


1「サルモネラ菌に侵された卵の殻をつたいおちた鶏卵を生食することで発症した食中毒」
2「サルモネラ菌に侵された親鳥の体内にあったことから内部まで感染してしまった鶏卵を生食することで発症した食中毒」
3「サルモネラ菌に冒された手指をつたいおちた鶏卵を生食することで発生した食中毒」


 ……って、パターンかな。

 1と3は、卵の殻の洗浄や食前の手洗いを徹底すれば予防できるけど、2は卵その物が感染しちゃってるわけだから、生で食べると確実に食中毒になってしまう。上から吐いて、下からくだって、熱が出たりなんだりして、最悪の場合は敗血症を起こして亡くなることもあるよ。

 ま。加熱したら死んじゃう菌だから、きちんと火を通して食べる分には問題ないんだけど、それじゃたまごかけごはんの本義が揺らぐよね。あたしはナマの卵の白身キライだから、たまごかけごはん食べないし、別にいーけど(ほんと鼻水だと思わない? 生卵の白身)。

 確かに日本は、たまごかけごはんという生卵を食べる文化があることから、きちんと卵の表面を洗浄してから販売してるよ。でも、これで予防できるのは、上に上げた1のみだし……

 ……あのねー。分かっちゃいないかもって危ぶんでるから勝手に重ね重ね説明しちゃうけど、サルモネラ菌って、死者も出るよーな菌なんだからね。日本食は確かに美味しいよ。美味しいけど、それを安全に日本人が食べることが出来ているのは、日本国だからだよ。ホントは、刺身なんて滅茶苦茶クレイジーな食文化なんだから。アニサキスのせいで年間どんだけの人数が胃壁食い破られて血みどろ悶絶してることか―――

 ―――てのは、言い出したらキリがないから、閑話休題。あたしだって好きだもん。イカ刺し。

 ……とりあえず、日本以外で生卵を食べるのはやめにしといて、食事前にはキチンとお手てを洗おうねってことで。はい、今日はおシマイ!

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「アサキングぅ。改めて思うんだけど、毛ってすごくね?」

「……なにをどう思い改まったらそうなるのか、そっちの経緯の方もなかなかに興味深いが。え? なんだって?」

「だから毛だよ。ケ。モウとも読む」

「モウ読みだったら、数の単位だけどな。命数法」

「さすがアサキング。目の付け所が数学オタク。
 命数法は、アレだね。とりあえず全部唱えたら魔を払えそうだよね」

「そうだな。その気になるって大事だよな。きっと魔だって空気読んで、そっと退いてくれると思う。イタイ子をイジメたいなら姿を現さないままバコッと一撃を食らわせればいいのに、わっざわざ視認可能な場所に姿を現してくれる奴だし」

「きっと、分かりやすい日本語で話してくれるよね。咄嗟に『お、お前は何者なんだ!?』て叫んだら、『サア参りましょう閣下。奥方と首輪がお待ちです』って応答してくれるよね」

「俺は何者だオイ。魔に迎えられた俺は」

「いやー。毛ってすごいよねー。
 頭髪と睫毛と眉毛とムダ毛は、美容業界にどれだけ寄与してるのかなー。あっちで切ってはこっちで伸ばして、そっちを抜いてはこっちに生やすでしょ。黄金ループだよ。組み込まれたら金を払い続けるしかない商売サイクルだよ。
 腕とかスネとかはフサフサだと男性ホルモン強めっぽいのに、頭はハゲてる方が男性ホルモン強いとか言うし。頭皮と頭皮以外で格差社会だよ。生まれた場所で命運決まるよ。人間社会以上だよ」

「人間社会以外の観点から見ろよ。幸運の女神なんて、前髪しか生えてねーんだから。掴み損ねたら再チャンスはないって意味合いで」

前髪だけ生えた神(メス)を捕獲せよって、テレビ番組のハンター企画でも、わりかし罰ゲームの部類なんじゃないかな」

「ピクミンの一種だと思え」

「女神たくさん過ぎるよー。希少価値ないよー」

「仮にも神様を引っこ抜いてブン投げて敵に食わせることについて、感想はないのか?」

「ないよー。芽の代わりに、あんなに長い髪の毛して野生してたら、確実に女神は貞子と化してるし。うぞうぞ貞子。ミニサイズだから携帯電話の画面から出る。ガラパゴスの二つ折りを開くと、ホラあなたにも―――」

「お前だってガラパゴスじゃねーか。ケータイ」

「そうだった。やべ。帰れ貞子。帰らないとドラゴンの鉄拳が火を噴くぞ」

「ドラゴンって何だよ」

「あんたの忌み名」

忌まれてたのか俺!?

「たりめーだよ。じゃんけんすると三分の一の確率で相手を丸コゲにする奴なんて、がきんちょ時分から村八分に決まってるでしょ。いくら豊穣たる中国四千年とはいえ、異端者に明け渡す懐なんてないよ」

「なんたることか……ドラゴンとして生まれついたがゆえの過酷な運命(さだめ)……」

「うあ。真顔でドラゴンとか自称して恥ずかしくない?」

曇りなき眼(まなこ)でコノヤロウ!! このやろう裏切り者!! すいません裏切り者です、先生、せんせえええぇぇぇ!」

「そういや中国には、竜のヒゲって飴あったっけ」

「ああ。現地じゃおなじみだよな、龍鬚糖(ロンシュータン)。大昔、百人の大臣を招いて宴会をした際、飴を作ってる様子を見かけた皇帝が、『竜のヒゲっぽい! 縁起がいいぜ!』とはしゃいで顔面に貼り付けたことが起源だっていわれてる―――」

食い物を粗末にして遊び呆ける皇帝を諌められなかった百人の大臣は、古今東西 立つ瀬ないよね

「そっち!?」

「皇帝も皇帝なら部下も部下だよ。わたあめ貼り付けて『サンタクロース』なんてネタ、今時分じゃ小学生だってやんないし」

「酒でも入ってたんだろ。佐藤と同じで」

「あたし?」

「ああ」

「あたし飲んでないやい。そりゃ、さっきのデザートは洋酒入ってて酒臭かったけど。こんだけ水たっぷり飲んだらリセットだい」

「いや。それ日本酒

「へ?」

「上善如水(じょうぜんみずのごとし)。そーいう酒」

「は? な?
 た、頼んでないよ? あたし。そんなの」

「うん。俺が頼んで、コップに入れ替えた。さっき。実験したくて。
 水みたいな酒っつっても、さすがに気付くだろーって思ってた。デザートで誤魔化されたとはいえ……本気で味オンチなんだな、佐藤」

「アサキングに比べたら誰だって味オン―――にゃぎゃー! 酒だって分かった途端に顔が熱いーっ! 脈が速いー! ぐるぐる……ふわふわり……」

「あー。ノンアルコールドリンクでも、パーティーだと酔っ払う奴っているからなー。水じゃないと分かったら酔い出すのも道理だなー」

「こんな……はずでは……脳の堕落をあえて助長させる飲料を、そうする必要もないTPOに、好きこのんで摂取するなんて……」

「けっ。聖書にまで書かれてる二日酔いの醜態から、てめぇだけが逃れようったって、そうは問屋が卸さねーんだよ。
 ほれほれ息が上がってっぞー? マラソン後かー? 風呂上りかー? やーいやーい。けらけらけらケラケラ」

「見るなー! 取り乱して真っ赤でふしだらな―――じゃなかった、ふつつかなワラシを見るな! ―――歯を見せて笑うなぁ! ってか、言い間違いを笑ったのか呂律が回ってないのを笑ったのかどっちだ! どっちでも叩くからどっちとも言え! 一回で済むところを二連撃……うああぁんトイレどこー!?」

「そちらですよレディ。なんならエスコートでも?」

「うっさいあほ! あほー!」

「バタバタ走ると余計にアルコール回るから気をつけろよー。
 ……いいなコレ。ぺらぺらと饒舌になるのか。あんまり喋りたくなくなった時とか、ちょくちょく仕込んだろっと」

―――これが、中日(なかび)の顛末でした。

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「とぅぶるりゃーやぁぁぁアアアア!」

「どおおぉぉぉ!? 出会いがしらに何しやがる佐藤!?」

「横隔膜に手刀をめり込ませようと万力チョップで闇打ちをしかけました!」

確かに! 寸分違わず!
 いや待て、なんで!?」

「息を止めさせるためじゃー!」

「なんで!?」

「息の根まで止めろとは言わん! ゆえに凶器は短刀でなく手刀です!」

確かに! スジが通っている!
 ならなおのこと始末が悪いわー! なんで息を止めにゃならんのだ俺!?」

「妙な吹聴を民衆にさせんがためじゃー!」

「みょう?」

貴様いつの間にあたしとディズニーランドでデートしたー!?

「なんだそりゃ!?」

「なぜに発端の発言者が疑問視するかー!?
 『へーえ。タンパクそーな関係しといて、ちゃんとラブラブなカップルらしくディズニーランドとか行ったりするんだー』とか、めちゃくちゃほのぼのとした目線で、なまあったかく見守られたわい! もう連中の頭ン中じゃ、わたしと貴様がネズ耳のカチューシャつけて腕組んでソフトクリーム舐め合いつつ夢の国の中心で愛の国(住人:ふたりのみ)を育む甘々チュッチュ映像が出来上がっとるぞー!」

「ネズ耳?」

「ねずみミミミ!」

「ミが多くね?」

「大は小を兼ねるのじゃー!!」

「そーかなー? 多は少を兼ねない方がいい気がするけどなー。過ぎたるは及ばざるが如しって言うしなー」

「さあ吐けそら吐け! 一体全体、ここ最近、どんな質問になんて答えやがった!?」

「うあちょ、襟首をつかんで振り回されても、逆さにしたピギー・バンクじゃあるまいしコインの1枚も出やしない……えー……あー……
 そうだ。そういや。こないだ、職場の世間話で『最近、休みの日に外出したか?』って風なことを振られたから、珍しくハンバーガー食べたくなって買いに行ったことを―――
 ―――それだ。すまん」

「は!?」

「ちょっと別のことやってて、上の空で『 Mickey-D's 』と答えましたのは俺です。はい」

「みっきーでぃーず?」

「はい。日本で言うマクドナルド、その英語の俗語です」

「……それが、ミッキーだけ印象に残って、ミッキーがいるところに行ったと誤解されたっての?」

「それしかないだろ。でもって、そんなとこに、恋人持ちがひとりでいくはずないから、お前と一緒に行ったってことになっちゃったんじゃねえのか。
 うう。せめて、口を衝いたのが古馴染みの『 Mackey-D's 』なら、聞き間違えられたところでマッキーだから、俺が油性ペン買いに行ったってだけで済んだだろうけどなぁ……」

「そだね。電気屋にサランラップ買いに行った前科もあるしね」

「言うなよ」

「……故意でないってことが分かった以上は、手を離してやるけどさー。責められやしないけどさー。ぶっちゃけ、こんなの、もう勘弁だよー」

「……そんなにか?」

「そだよー。ディズニーランドって、ディープなファンがわんさかいるんだよー。
 何時からどこの遊具に並んで、どんなものを食べて、どのホテルに泊まったのかって。ウルサイにも程があるよー」

「悪かったよ。悪かったって。
 大変だったんだな。受け答え。
 今度、お詫びに、メシでも奢らせてくれ」

「うー。ダシ巻き卵が美味しいとこにしてよねー」

「ああ。期待しといてくれ」

―――これが、初日の顛末でした。


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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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