(とにかく。ひとまず。坂田さんは、なんて言ってた? とっても嬉しかった? てことは、感謝しているのか? 俺に? 坂田さんが? 今この時に? 今もってしても。だとしたら、)
 滑稽だ。
 騒動を牽引したのは小杉かもしれないが、扇動したのは紛れもなく麻祈であり、坂田はなし崩しに巻き込まれてここまで来たに過ぎない。彼女の鬱状態に介入しはしたが、それは麻祈が己の懸念を払拭したいがために行った行動で、結果的に彼女が回復したのは幸運な副産物だ。それはそれだし、これはこれだろう。どうだ? ほかに考える余地があるか?
(どうでもいいだろ。それでいいだろ。めんどくさ)
 麻祈は、投げ槍に許しを乞うた。うんざりと。
(いいからさっさと俺を怨めよ。悪者がいたら都合いいだろ。小杉さんだってそうしたんだから、あんたもそれに続けばいいんだよ。佐藤にまで面倒かけたんだから、もう幕切れにさせてくれよ―――)
「わ、たしじゃ、駄目ですか!?」
 との呼びかけに、愚痴も折られた。わたしでは駄目ですか?
(なにが?)
 麻祈への見当違いの感謝が、坂田では不適格だという合否に変転している。黙りこくっていた数秒で何があった? 何を聞き落した?
 だがしかし、こちらの理解の浸透を待たない、にっちもさっちも行かない詰問は、矢継ぎ早に連綿と射られてくる……                                                                    
                                            
                                                                            
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