「麻祈さん、どうして、駄目ですか……?」
「どうして?」
これになら、答えられる。
麻祈は、口を割った。
「どうしたところで駄目ですよ。俺には、端から、どうしても駄目も無い」
そう。それ以前の話だ。
寄越せる答えを見つけた途端に、飛びつくしかなかった。こんな浅ましい自分には、“どうして”だとか“駄目なのか”とか、論じる価値など最初からありはしない。
「―――どれかがありさえすれば、坂田さんに責任を押し付けることも出来たでしょうけどね」
英語にぶらつきかけていた頭で日本語へと返事を准(なぞら)えたため、自然と坂田の言い回しを手本にして、煙に巻くようなせりふとなってしまった。自分が坂田にそうなったように、今度は自分が坂田を考え込ませてしまうかもしれない、と……その認識はあった。あったのだけれども、それ以上に、坂田が絶句してくれて正直ありがたかった。そんな自分でも、まだやれることはあるか?
ふらついた目玉が、テーブルの上に二人前のティーセットを見つけた。
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