(……あの時は、言い返すことができなかった)
日本に定住し始めた当初、女友達だと思っていた何人かと、彼女らの助っ人だと称する取り巻きに囲まれて、交友関係を明確化しろと集団直訴された時。
被告である舶来品の青二才は、おしなべて乳臭く、己と“和”についても希望的観測しか持っていなかった。ふわふわとした白っぽいまるのような空気感を絶やさない集団力学を成す一員になることが、自分にも可能であると疑うことすらなかった。だからこそ疑いもなく、一事が万事とばかり“和”に献身した―――勉強から愚痴まで親身に何時間でも付き合って、座談会から密会まで選り好みせず心を砕き、そうすることに誰彼と分け隔てたりもしなかった。年齢も。男女すら。
それこそが非難されているのだと、理解できなかった。
だからこそ今になってまで、その言葉は臓物を焦がし続ける。
「あんたは自分が特別だから、ほかの誰も特別になんて出来やしない、人でなしだ」
(そうだよ)
麻祈は、受諾した。
(こんな人でなし―――ヒト様なんかの、手に負えないだろうからなぁ……お前らなんかに、くれてやるものかよ)
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