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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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.紫乃は、へらりと弛んだ顔のまま、阿呆のように立ち尽くしていた。

 葦呼も、ずっと立っていたけれど、ふわりとした髪に隠されてしまっていた横顔の顔つきは、杳(よう)として知れず。

 真顔の麻祈は、きびすを返した。

 そのまま、歩いていく。喫茶店の出入り口へと。行ってしまうのだ。それはそうだろう。彼は麻祈だ。最初から、別世界の人だったのだから。別の世界に戻るのは当たり前じゃないか。

 そんな風に割り切るなんて、紫乃にはもう出来ないのに。

(あさき、さん)

 拒絶されても縋ってしまう。

「―――あさ、き、さん」

 縋るならば、呼んでしまう。

 彼が、―――

 立ち止まって、振り返った。紫乃へと。こたえてくれた?

 合コンの夜にそうしてくれたように、彼はまた出入り口のドアノブに手を掛けながら。

 ただし今日は逆光で顔が見えず、呟きだけが肩越しに響く。

「それがなにか?」

 それがなにか?

 彼は麻祈だ。それがなにか?

 分かるか? ―――そんなことさえ問うてくるしかない、お前。“それこそが”。

(ごめんなさい)

 彼に、とどめまで頼ってしまった。それに気付く。

 血の気と共に、体温までも下がった気がした。視界まで暗くなる。そればかりは紫乃に起因したものでなく、陽光を差しこませていたドアが閉まってしまうからだ。閉まってしまう―――

 ぱたん……ドアが、彼を外に吐き出した。からん……お客様が、別世界までお帰りです。知らん顔で、平和にそれを告げる鈴の音色。

 それが、もう間が抜けた音だと思えなくて、―――

「ごめんなさい」

 てんで話にならない、お笑いぐさのくせして、一丁前に鼻白んだりして、―――

「ごめんなさい」

 疲れさせて―――

「ごめんなさい」

 こんなのは、もう伝わらないし、伝わったところで、もっと疲れさせるだけだろうけれど、それでも止められなくて―――

「ごめんなさい」

 刹那だった。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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