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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「あなたから、頑張っているんですねって言ってもらえて。あなたから、心配していますって言ってもらえて。あなたはお医者さんとして当然に、わたしへ接してくれただけかもしれないけど。でも、わたしにとっては、それは麻祈さんだったんです。麻祈さんだったんです。だから……」

 彼は、無言だった。

 すぐそこに立っている葦呼と目配せすらしてくれない。つるりとした黒瞳は瞬きさえゆっくりとして、本音を目蓋で掃いてしまおうとすらしていない。見れば分かる。紫乃のような言葉が、麻祈にはないのだ。

 それは、今だからなのか?

 もしかしたら、最初からそうだったのではないか?

 最初から―――

「わ、たしじゃ、駄目ですか!?」

 奔流のようにせり上がってくるうそ寒さから逃れるように、言葉ばかりが熱を上げていく。顔が引き攣っていく。太腿を押さえつけている両腕は、指の先まで突っ張っていく。縒り上げられた涙腺から涙が滲んできた。どれもこれも、かかずらっている余裕はない。

「どうして駄目ですか!? 頑張ります! 頑張りますから、わたし! 駄目じゃなくなることが出来るように、いつか、ちゃんとなりますから!」

 そうして、言葉だけが終わる。

 呼吸が固まる。汗が冷える。しっちゃかめっちゃかになった喫茶店の中、ぽつんと置き去りにされた体中の強張りを持て余しながら、紫乃は怯えていた。心の底から恐怖していた。なにを訴えても伝わらない……もがいても足掻いても意味が無い……悲しんでも苦しんでも下らない―――のだとしたら、

 もう、なにをされても、なにもしないで、いいかな。

 そう思えた途端、半笑いになってしまった。あの時、小学校で、いじめられている最中に―――幼かった紫乃は確かに、ほほ笑んでいた。

 その予感がするなんて、信じられない。

 ましてや、相手が麻祈であるなど。

 迸る不安から、口先だけでも紛らわしておきたい。ただそれだけで、紫乃は、言ってしまっていた。

「麻祈さん、どうして、駄目ですか……?」

「どうして?」

 麻祈が、微かに口を開いた。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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