「じゃあ逆に、モテない根拠を教えてちょー」
「ちょ?」
「反面教師に頑張るからさぁ」
「はあ」
と安請け合いしたところで、どこから手をつけたものか、判断しようがない。麻祈は譲歩を願い出た。
「でしたら、俺がモテるという根拠を教えて戴けますか?」
「ガッテンちゅー」
「ちゅ?」
「いいからいいから」
そして橋元は、無気力なのか気楽なのか両方とも混在しているからそんなにもタダ漏れなのか、とにかく瞳の光と声を間延びさせて、こちらを宥めすかすように両手をぺらぺら翳してみせる。
「ほら。段先生、根っから紳士で、患者家族からスタッフまで分け隔てなく丁寧で優しいし」
「そうしておけばカドが立たないだけ」
「イイ声した標準語がステキだし」
「無駄に貫通力がある声質のせいで、うっかり独り言さえ言えやしない。標準語も、過ぎてしまえば慇懃無礼で冷たい印象を与えるだけだと、先日もお叱りを受けました」
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