忍者ブログ

きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。


.麻祈は、注目と注意を佐藤に引き戻した。彼女は反駁するでもなく、あっさりと唇を閉じている。言葉を呑んだついでに、麻祈から献上した冷水を飲んでくれそうな気配もないが。

 そう言えば、お冷やついでに置いていかれたおしぼりのことを忘れていた。自分の分もそうだが、佐藤の分も手つかずで卓上に転がっている。そのひとつを、隣席の佐藤の前に転がしてから、

「絶対に分かり合えない者同士が、絶対的に分かり合おうとする。それは―――そうだ、まさしく、『カワヅ』に見る不条理の再来じゃないか。作者はジェイヤーだったか? 前に、お前から借りた本だぞ。まさか持ち主が、内容を忘れたとは言わないだろ?」

「言わないよ」

 佐藤の手が動いた。おしぼりを取るつもりだろうと思っていた。

 だから彼女に胸倉を掴まれた時も、掴まれてぐいと引き寄せられてからも、麻祈はされるがままになっていた。

 佐藤が、喉笛を軋らせる。

「だからこそ言わせてもらおうか」

「なにを……?」

「たわけ。お前が、さっき言っただろ。酔いどれババァの世迷い言を、だ」

 吐き捨てるように嘲るくせに、瞳の光は静かなものだ。落涙の予兆すら見つからない。おかげで、目を逸らす理由も無い。

拍手[0回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カテゴリー

プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

忍者カウンター