.正気の沙汰ではない。そうなることさえ狙っての深酒なのだろうが、そうであっても、正気の沙汰ではない。そうまでして問うことなのか? お前の世界に、誰かは、いるか?
(―――いねえよ)
人でなししか。
(いらねえよ)
人でなししか。
(うるせぇよ……るっせぇんだよ、テメェは! 俺のことなんだから、ややこしくすんじゃねーよ! 人様がそれでいいっつってんのに、それでも藪をつついて蛇を出そうとするとか、テメェこそ何様のつもりだよ! この―――この、)
この世話焼き。
そう続けたくないと、思ってしまうことを、今までそうしてきたように、分かることなく、いたかった。そうして、彼女と“別ることなく、痛かった。”
「ハハ―――はッハァ」
嗤う。
(やってられっか―――この期に及んで)
麻祈は、幾度となく試し続けてきた均衡をやけくそで突き崩すことにした。
「“お前がそうだ”と言う返事を、ねだってるんならくれてやる―――ただし俺と連名した婚姻届と引き替えだ。思い返せば喧嘩も今しがた済ませてる気がするし、誓いが欲しいなら黙祷しながらキスしてやれる絶好の距離だしな……」
怒りもあらわに、侮蔑した。
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