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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「葦呼ちゃんのご両親は? その話は?」

「してないんじゃないかなぁ。前に、ちょっと鼻風邪で電話に出ただけで、それ見たことか医者の不養生めって押しかけ女房されかけたらしいから。こりごりだって言ってたもん」

 大学へ進学するために単身で上京した葦呼は、地元に帰ってきてからも、ひとり暮らしを続けていた。実家から通勤するには距離があるというのは本当だろうが、両親の過干渉から物理的に距離を置きたいというのが本音であることは、推してはかるべきだろう……結婚・同居・孫の誕生の三点セットをせびってくるのは紫乃の父母も同じだが、その殺気立った険呑さは桁が違う。少なくとも紫乃の親は、血縁の年忌法要だと嘘をついてまで、見合い相手との会食に連れ出したことはない―――あまつさえ、その件について父を問い詰めたところ、「こんなことまで親にさせるほど追いつめたのはお前の方だ」と逆ギレされたこともない。

 その諍いは、葦呼から匙を投げたため休戦状態となり、いつの間にやら和平交渉を締結したことになっていたそうだ―――少なくとも葦呼の父にとってはそうらしい―――が、和平交渉とはそもそも和平しているなら在り得ないものだからして、つまりいつだって和平したという建前の裏から相手を侵犯する口実を狙っているという裏返しだ。鼻風邪の件がそれに当たる。

「あの手この手で追い返したらしいけど。それに、もの凄まじく苦労したんだって。色々」

「あらら。かわいそうに。どっちもこっちも」

「どっちもこっちも?」

「そりゃそうでしょ。子どもと親だもの。他の誰にも肩代わり出来ないし、やめられないしね、こればっかりは」

 遂に母は、本格的に料理する手を止めた。包丁を手放して、エプロンの裾で指を拭い始める。そうして、仕草ばかり先走らせながら、

「なんなら、お母さん、車で送ろっか? 葦呼ちゃん家の前まで。あなたがナビしてくれるなら、それくらいは……」

「駄目だって。お母さんは夕食の支度があるし」

「あんたが自転車でいけるとこなら、往復しても三十分かかんないでしょ」

「帰宅ラッシュに被らないとも限らないじゃん。葦呼のアパート、駅前寄りなんだから。それで時間かかったら、ほんとに夕ご飯が間に合わなくなっちゃうよ」

「そんなこと言ったって、あんた」

 渋る母を、紫乃は押しとどめた。実際にそちらへと片手を翳しながら、もう片手でショルダーバックの紐をいつもの肩口に落ち着ける。眼差しを強めて、大丈夫と念を押した。

「バスもまだ本数あるから、駅の近くの適当なところで降りて、歩いて行くよ。早く帰ってこれてて良かった」

 己に確認するように独り言をまとめて、紫乃は外に出た。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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