.ジャイアー。
それはマニアックな通称であり、史実に記された正式名称はジェイデクバ・アーウレン。それを亡霊であると断じる者もいる。
その持論を夢想だとせせら笑う根拠に乏しいのは、ディープなジャイアリスト・アンド・アーウリアンたちでさえ渋面にさせる事実であり、それゆえに、その苦々しさこそがえもいえぬ隠し味となっているのだとの極論を豪語する狂信徒をも受諾せざるを得ない根底ともなっている。彼―――彼女?―――の生涯は、歴史として数奇であり、文学史として奇妙であり、言うなれば無限の奇々怪々に満ちていた。その一例として、産まれ、育ち、暮らし、老いる中で、それらと明らかにそぐわない自称を著作の自著に必ず冠し、にも関わらず、その冠をことごとく無視した。若き日のジェイデクバ・アーウレンの筆が万物の栄枯盛衰を描くことはなかったし、在りし日のジェイデクバ・アーウレンの文字は思い出の日中夜を写し取ることもしなかった。
これぞ亡霊たる証である。そう諸手を叩く者は、歓迎して続ける―――現世のあらゆる整合性を無視する。それなのに、それゆえに、現世に存在し続ける!
(あほくさ)
麻祈は内心、舌を出していた。おべっかを連ねたファンサイトを通読した感想として。先日のことである。
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