忍者ブログ

きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。


(言い寄って、一枚二枚と引っぺがしたいだけのことだ。好色な野郎との違いは、妄想して手を伸ばす先が女の服じゃなくて、死人の謎ってだけ。どっちみち、ロマンチストってこったろう)

 日勤を終え、夜が始まる刻限の手前。出版物をメインに扱う大型店舗内にて、麻祈は立ち止まっていた。

 居心地悪く、ボディ・バッグを担ぎ直す。近年ずっと、書籍の購入はウェブサイトを介した通信販売に頼り切りなっていたせいもあって、久しぶりの本屋に馴染めない……と言うよりか、昔は馴染んでいた覚えがあるだけ、馴染まない部分にひっかかるというのが正しいか。えらく丸く縮んだ兄から「え? なに食って、どうしたんだ? 麻祈」と怪しまれた、あの再会の時のように―――

(いや。あれは、一年くらいで俺が伸びたんだけど。一気に。身長。でもって、見下ろすようになった途端、桜獅郎の体つきが、貫禄ってよりも肥満っぽく見えるようになっただけなんだけど)

 それなのに、声も物腰も兄でしかありえなかった。あの名状しがたい奇妙さ。

 それを再び甘噛みしながら、麻祈は文庫本コーナーに立ちつくしていた。天井からぶら下がった看板表示に従ってここまで来たのだが、ジェイデクバ・アーウレンなど、見る影もない……それ以前に、文庫本という大前提すら、瓦解の危機に瀕している。少なくとも、その“文庫本”を目の前にした麻祈の内面では。

(……文庫本?)

 揃いも揃って、昆虫じみた女こども―――少なくとも麻祈にとっては複眼なみに巨大な目玉と節足レベルの細さの四肢と各種強調されるパーツが個性的なようでいてある種の記号として画一的な生物の分類は昆虫が妥当だ―――が上目遣いをするか見下すかしてくる表紙の本が平積みされた本棚の前で、訝しむ。

拍手[0回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カテゴリー

プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

カレンダー

08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

忍者カウンター