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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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.この玄関のたたきには、大人が二人収まる広さなど無い。解錠したドアを押しのけて身体半分ほど外に出ながら、麻祈は坂田のそれを見ていた。右足、そして左足―――ぎこちない所作といい、靴下を脱いでからのゴムの締め付け痕といい、よそに預けられた小学生のようだ。用意されていたフィットしない靴と靴下を、気兼ねしながら使うしかない。靴で靴ずれしないように―――靴ずれしたところで、靴下に血がつかないように……

 慣れ親しんでいた足だった。それは、かつて段の家で。

(―――ああ。俺なのか)

 それを思い出した。

 思い出し続けないうちに、外に出る。

 廊下を消灯すると坂田も出て来たので、部屋の鍵をかけた。一階に向かって、さっき通った通路を、逆順に下っていく。そこを通う風の音も同じ。通う際の反響の具合も同じ。だからだろうか、自分ではない足音が気になってしまうのは。

 自然に歩こうとすればするほど不自然さが際立つ、拙い歩調。

 それを、無性に紛らわしてしまいたくなった。

「誰も悪気なんてないのにね。かわいそうなことに、それでも、歩きづらいんだ」

「え―――麻祈さん、なにか言いましたか?」

 聞かれていた。

 あまり振り向かないまま、繰り言を呼びかけに挿げ替える。

「歩きづらいですよね。かわいそうに。すぐ近くですから。駐車場」

「はい……」

 坂田の返事も、それで終わる。

 それでいい。過去に麻祈はそのように祖父らから話かけられたことはないし、話かけられたところでそのような返事はしなかったろうから。

 やがて、地上に立つ。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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