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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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.坂田が黙り込む。俯いて、なにやら床を凝視しているようだった。あるいは、その上に乗っかっているスリッパを。

 思い至って、麻祈は再度、それを断った。それ自体は慣れたことだ。慣れたことだが、慣れるはずもないため息を、せりふに浪費することで誤魔化しながら。

「あの。それ、ちゃんと洗ってありますし。俺、本当にそういった病気は持っておりませんので」

「ち、がうんですから!」

「は?」

 えらい剣幕で顔を上げてきた坂田に、のけぞりつつも、小首を傾げるしかない。

「違うんですか。はあ。じゃあ坂田さん、一体なにが―――」

「戴きます!」

「あ。熱いから気をつけ」

 もう遅い。

 机上から掻っ攫ったコーヒーカップに、水飲み鳥の玩具じみた動きで激突した坂田の顔が、即座に元の高さまで跳ね返った。含んだものを吹き出すのでは……しかもそれが万が一テーブルのノート型パソコン(Laptop)を直撃したらと血相を変えて立ち上がるのだが、彼女の渋面が赤黒くなっただけで、未曾有の大惨事は杞憂で済んだ―――

(って話か、馬鹿! んなことよりも坂田さんだろ!)

 罵りながら、椅子の上で縮こまる坂田に、一歩を詰める。狭隘な一間だから、それだけでもう間近だ。膝立ちになって、彼女へと声をかけた。罪滅ぼしのつもりでもなかったが、自然と猫撫で声になる。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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