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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「ごめんなさい。声をかけるの、間に合わなくて。火傷しちゃいましたか?」

 背中を丸めた坂田は、両手でコーヒーカップを前髪の前にかざして、引っ込めた首を器用に横振りしてくる。仕草としては否定だが、無言なのは、口を痛めた直後だという何よりの証拠だ。なおのこと、低頭するしかない。

「火傷しなくても、びっくりさせましたよね。冷やすための氷なら、幾らでも出しますけど」

 彼女は、ぶんぶかと一層に激しく否定方向に首を振る。

「それなら、本当に、結構なんですけど。遠慮だけ、しないでくださいね」

 彼女の返事は、やはりぺこぺこと下げられる頭だけだ。

 麻祈といると、坂田は本当にろくなことがない。背筋にのし掛かってくる後悔を押しのけるように立ち上がって、麻祈は元のようにベッドへ腰掛けた。姿勢は変わったが気分は晴れない―――あるいは、感情も体勢も、本当の意味で元の木阿弥か。のっぺりとした重さを増しゆく頭蓋への慰めにと、せめて行き場の無い長嘆を噛みつぶすのだが、ひとつふたつと嘆息に千切れただけで手に負えない。

(なら、なおのこと、早く帰してあげないと)

 気が重いことだったが、麻祈は坂田に声をかけた。

「お姉さん」

「―――え?」

「早く、来てくれたらいいですね。お姉さん。あれ? 確か、お迎えはお姉さんじゃありませんでしたっけ? 合コンの時のそれ」

「あ! はい、そうですね。すいません!」

「あの。さっきから、そんなに謝らなくても。なにも悪いことしてないでしょう?」

 おっかなびっくり携帯電話を鞄から取り出した坂田に、どうにも疑問符が散ってしまう。彼女は手元を操作するのに夢中で、聞いていないようだったが。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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