. 紫乃もまた、私室の中へと戻った。電気をつけて、とりあえず、基礎化粧品を顔に塗る。それから、ベッドの上に散乱していた服や小物を、学習机とその座席の上に移した……よそ行きの服だけはクローゼットにすべて掛け直したが、残されたあれこれの片付けは、明日へ回して良かろう。合コンから持って帰ってきたまま床に放り出していた鞄、そのフリルまみれの腹を掴み―――
くしゃ、と異様な感触を握り潰して。それを黙殺できず、紫乃は鞄の留め金を開いた。
中身は、いつも通りである。ティッシュ。携帯電話。あぶら取り紙。最近はどこの店のトイレにも紙ナプキンが置いてあるので、ハンカチは持って歩かなくなった。その身代わりのように、一枚のレシート。
(あ)
忘れていた。
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