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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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. 手にした紙―――どうやらレシートらしい―――を差し出しつつ、言ってくる。

「もしよろしければ、佐藤に繋がらない時は、こちらにどうぞ」

「え?」

「俺の携帯電話の番号です」

 とどのつまり、個人的な連絡先。受け取るなんて、そんな。

 ニュース速報のような警告が後ろ頭を射てくるけれども、

「俺なりに心当たりがある居場所に、佐藤がいるか連絡が取れるかもしれませんから。どうぞ」

「あ、はい。すいません……」

 自意識過剰だった。羞恥に悶える。それを見られたくないなら、彼の目を引く行動をしてはならない―――とのドミノ倒し的思考に流されて、紫乃は俯いたまま、おずおずと用紙を受け取った。大体にして、そういった目論見で連絡先を交換するなら、さっき合コンの終わりにそうした時に、紫乃とも携帯電話で赤外線通信していたはずなのだ。思い上がりも甚だしい。

 その時だった。自分の鞄の中から、携帯電話が震える。通話の振動だった。

 それを見下ろしたのと入れ違いに、上から麻祈の囁きが降る。

.
「―――あちらの方が、お姉さんですね」

 彼の視線を追えば、ロータリーの一角に、見慣れた浅黄色の自動車が停車していた。乗車しているのは、もちろんのこと、見慣れた姉だ。いつも通りのふてぶてしい素顔で、こちらへの合図に手を振っている。

 彼女と目が合うと、携帯電話の鳴動は切れた。一応、了解の意で手を振り返した紫乃へと、麻祈の済まなそうな謝罪が呟かれてくる。

「引きとめてしまったようで。申し訳ありません」

「いえいえいえ! とんでもないです。わたし、行き先が一緒の人がいて安心したんです。本当に」

「それは良かった」

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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