. 小杉と並んで、麻祈はショッピングモールを歩き出した。ミネラルウォーターを飲みきって、通りすがったゴミ箱にペットボトルを捨てる。彼女は、己の紙コップを、そのゴミ箱の縁に置いた。どうやら中身が残っているらしい。
(だったら、フードコートの流しに捨てて、空けてくれば良かったのに。こんなとこに置き去りにして、落っこちて引っ繰り返りでもしたら―――)
そう思いはするものの、
「どーしたんですか?」
「いいえ。なにも」
と、小杉に尋ねられると、反射的に返事をしている自分がいる。
(めんどくさ)
麻祈はうんざりと、口癖と吐息を食い千切った。小杉について歩くまま。
.
(まあ、コップも中身も、ひっくるめればゴミはゴミだしな。モラルには抵触すれすれだとしても、改めて忠言するほどエチケットに欠けた行為でもないか)
昨晩の陣内の喫煙と違って、我知らず周囲数メートルにわたり害毒を噴射するのでもない。むしろそうであってくれたらこうして思い悩みもせず、指摘する踏ん切りもついたろうという気はするが。
「やっぱり、どーかしたんですか?」
「うん? まさか」
ついさっきと同様の応答をして、麻祈は今度こそ小杉へ集中することにした。
あっちにひらひら、こっちにふわふわする小杉を、温かい眼差し―――胸中ではそれより半度ほど熱の失せた、より生温かい寄りな感じ―――で観察する。彼女はひとつの店に入っては、ふたつみっつと商品を選び、みっつよっつと喋っては、いつつむっつのリアクションを麻祈に求めた。口には出さなかったが、口に出す以外の諸々の立ち居振る舞いがそれを如実に物語っていたので、麻祈はそれに順応した。相手によってどうにでも捉えることができる言葉―――まじで・すげえ・ぱねえ・やべえ―――を話中の主眼とし、ほどほどに笑いつつ、彼女の動向を分析し……
はたと、気づいた。
(全部、若い女向け売り場だろう。これ)
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