.女性らが佐藤の目論見通りの配置に着席したのは、背後の物音やなんやで見ずとも知れた。ただ、全部が全部計画通りといったわけではなかったらしく、麻祈の真後ろについた佐藤の発言は目に見えて減っている。どうやら、安全弁の一助として期待していた人物の登場を待たず、火蓋が切られてしまったようだ。これからの火の海の航海を、どのような舵取りで乗り越えるのが最良か、必死に考えているのだろう。
ただし、そういった海原の嵐が船長の判断を待つことが無いように、小杉の勢いも止まらなかった。なにやら滔々と、自分と麻祈の付き合いについて誇示し、尊大に喋る―――恫喝さえ混じる、その中で。
聞こえてきたのは、坂田への嘲弄だった。
「手出ししたくなるのも分かるけどさぁ?」
坂田への愚弄だった。
「あんたみたいなボッチいOLからしたら、」
まぎれもない侮辱だった。のに―――
「玉の輿って奴だもんねぇ。有名医大の主席で帰国子女、名家生まれの将来有望イケメンドクターなんて」
(どうして、そうなる)
麻祈は、渾身から、めげた。
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