Topper(トッパー)は、Top hat(トップハット)の愛称だ。
日本じゃ『シルクハット』って呼び方が一般的らしいけど、俺がいたとこじゃ熟練工の手で絹から仕立てられた高級品だけをシルクハットって呼んでて、同型の安モンはトッパーってカンジ。だからやっぱ、シルクハットにウサギつめつめ、なんてのは言語道断です。うんうん。
ちなみに、ぺこんと潰せてコンパクトに出来るタイプは『オペラハット(あるいは発明したフランス人の名に由来してギブス)』とも言う。オペラを観劇する際に便利なタイプだな。
魔法使いってなると、とんがり三角帽子に杖ってイメージだけど、魔術師・奇術師(マジシャン)となるとやっぱりトッパーに杖だよなー。上流階級者の夜会に一興、ってのがマジシャンの始まりらしいから、きちんと正装してる雰囲気がある。
そだ。ついでに、杖について。
俺がいたとこじゃ、紳士が手にした杖は、隠し武器の用途が強かった。仕込み杖ってやつさ。柄を引き抜くと抜き身の刃が出て、野党と一戦交えることができるってわけ。まあ、本当にンな血煙劇場が路上で繰り広げられていたかは知らん。ほかにも、銃を撃てたり、鋲(びょう)を放つことが出来たりと、色々なタイプの杖があったらしい。ギミックが多いと手入れも大変そうだし、タマ詰まりや暴発などの危険性も孕むから、趣味人以外は手を出しそうにないけど。どんなもんなのかな。
それは後年、傘の役割に取って代わられた。日常的に携帯していても不自然じゃないものが、杖から傘に代替わりしたってわけ。世界大戦の折には、毒針を仕込んだ『コイツ』を使っての暗殺がたびたびあったって話だ……柄を、キュッとひねると毒針が先っちょからピョン出て、ちくっとターゲットを刺して、またキュッとひねって戻し、あとは立ち去る。しばらくしたら、ターゲットは生き倒れに早変わり。遅行性の毒なら、ターゲット自身が被・犯行現場から移動してくれてるから、万が一の物証も紛らわされてしまうって寸法だ。
いや、そんなおっかない頃のことでなく、現代でも値段の張る『仕込み傘』は売ってるぞ。んでも、その中身はさほど物騒なもんじゃなくて、お気に入りの洋酒の小瓶になってたりする場合が多いけどさ(笑)。
日本じゃ安物の傘がぽんぽん売られてて、見知らぬ連中が気楽にとっかえひっかえドロボーのやりっこしてっけど。俺はがきんちょの頃にゃあパリッとスーツでキメたジェントルマンが細身の布傘を携えてるキリッとした出で立ちに憧れたもんだから、あんましビニール傘を持った背広姿のサラリーマン(日本の)が好きじゃない。背広のジャケットを脱いだサラリーマン(日本の)並みに好きじゃない。
ま、医療職になった今の俺にとっては、メジャーな杖と言えば病人&老人の歩行補助具が関の山ってとこかな。やれやれ。ジェントルマンへの道は厳しいね。
んじゃ、今回はこれにて。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
【はみだしDNDDこらむ】
背広(セビロ)って今でも通用しますかね?
アサキングがジャケットを脱いだサラリーマンのことを好きじゃないと言ってるのは、あっちの国では品のない姿だとされているからです。あっちじゃコレ、下着姿みたいなもんなので。ステテコ腹巻ゲタ一丁で近所を錬り歩いてる、我が物顔したオッサンを見かけたよーな顔すんじゃないかな。
だからこいつ、きっと胸ポケットにボールペン差してるリーマンも嫌だろうなーと思います。「便利なのは分かっけどよー、ただでさえ下着姿なんて見たくもないのに、パーティーで一輪花を差すべきとこへ仕事中にポールペンかよー。見たくないなー。ってぇか、そもそも、スーツのドレスシャツに、ややこしいポケット作るなよー」みたいな。
でも、日本に居着いて四捨五入して10年、そろそろ「あれはスーツじゃなくてセビロ。俺の知ってるスーツじゃなくて、日本らしい背広なだけ」と自己暗示を掛け慣れてほしいものです(他人面)。
ジャケットをちゃんと着たサラリーマンを見かけたら見かけたで、袖(そで)からのぞくシャツの汚れが気になるんだろうし。やれやれ、だ。
※ジャケットをちゃんと着たサラリーマンを見かけたら見かけたで、袖(そで)からのぞくシャツの汚れが気になるんだろうし。
→「ホワイトカラー」という単語をご存知でしょうか? 「白色」? 日本語ではそれもアリかもしれませんが、本場の言い方に則って訳すなら「白い襟(えり)」。そう、「White-collar」です。ドラマのタイトルとして有名でしょうか。
これは「頭脳労働者」という意味で、対語として「肉体労働者(blue-collar)」があります。
ここでポイントなのが、「白い襟が、どうして頭脳労働者という意味なの?」ということですが、端折って言えば、『自ら身体を汚して労働しない身分』ってこと。ですから、ペンインクで汚れた袖や、あぶらで黒ずんだ襟などは、その身分を侮辱していることになるわけですね。白くねーから。
そもそもスーツの下に着るシャツってのは、ジャケットを汚れから守る下着なので、……まあ、黄ばんだ下着をさらしながら、正装した際には花を挿すべき位置にボールペンを挿したオッサンが路上を集団で行き交う夏場なんて、アサキングじゃなくても眉をひそめるわな。
ちなみにこの「collar」、日本語らしく「襟」の意味で定着した単語があります。何だと思いますか?
答えは「ハイカラ」。大昔、高い襟の洋装を着用したスタイリッシュな人のことを「ハイカラ(ハイ=高い カラ=エリ)な人」と称したのが始まりらしいです。
うーん。やっぱり、こーいった思考巡りは、多国籍になるにつれておもしろいや。
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