彼女は、より一層の渋味を、面の皮に注した。そして、
「あんたねー」
と、そこで残りの言葉を、吐息に切り替える。
予想外の展開にきょとんとしていると、佐藤が己のコップを持ち上げた。表情は晴れ切っていなかったが、動作は思い切ったような敏捷さだった。
.
「とりあえず今日は食って飲んで鋭気を養いつつ、事態収拾の手筈を考えるとしますかぁ」
「おーう。我らがシンクタンクの早期解散を願ってぇ」
「かんぱーい」
「かんぱぁい」
誘いの仕草に乗って、麻祈は佐藤のそれと自分のそれを打ち鳴らした。流れでそのまま、鏡写しの動作でコップに口付ける。とうに氷は氷解し、中まで彼女とお揃いの水となっていた。
[0回]
PR