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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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.そのことを、気付かれてはならない。大型書店の白すぎる屋外灯に照らし出された麻祈の顔は、その眩さを鬱陶しがるのとは別の意味で、しかめっ面となっているのだから、その渋さを強めるようなことは出来ない。ましてや、もっとはっきりと、嫌悪などよぎらせてしまうようなことになったら―――

 その閃きを跳ねのけるように、紫乃はばっと右手を挙げた。きっぱりと、麻祈に向かって発言する。

「やっぱり歩いて帰ります!」

「は?」

 怪訝そうに深まりゆく、眉間の皺。

 それをとにかく見たくなかった―――見るほど、行く末まで見通せる気がした。渋面が。

「もう雨ほとんど止んでるし、わたし歩くの好きですから! じゃあ!」

 言い張る声半ばに、紫乃は麻祈から顔を背けた。

 次いで、肩、腰、きびすと反転させていく。どれかで もつれて転んだりしないか気にしていたせいで、まっすぐ挙上した手を引っ込め損ねてしまった。が、大丈夫―――それは、歩き出して転倒しないと目星がついた頃に仕舞っても、充分に間に合う……
 小雨がぱらつく駐車場に、軒下から踏み出す。そのアスファルトは歩道に繋がり、歩けば自宅まで繋がっている。ならばそこまで、歩いて行ける。そう思った。

 またしても、思っていただけだった。

 挙げたままでいた右腕の服の袖がつっぱって、前に進めなくなる。背後のなにかに引っ掛かったらしい。なにに?

 振り返る直前、その右手の中に、硬い感触が押しつけられた。細くて長い。棒だ。

 思わずそれを握り返して、肩越しに振り返る。麻祈が、紫乃の右袖をつまんでいた。

 そして彼は、つまんでいた指と、押し付けてきていた棒―――傘の柄から、もう片手を離しながら、

「そうですか。ではどうぞ」

「え?」

「俺は走る方が好きですから」

 そして、傘と紫乃を置き去りに、言葉通りに駆け出した。

「あっ麻祈さん!?」

 落っことしかけた傘を思わず握り締めながら呼びかけても、彼は止まらない。一目散に駐車場を抜けて、もう歩道に出た。街並みに消える、それを呼び止められない。呼んでも、止まってくれない。のなら―――

 紫乃は、駆け出した。

 麻祈を追って、ひた走る。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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