(い、今のどこが注文だったの? 映画みたいなやりとりしてただけじゃん。わけ分かんない……)
とりあえず、分からなかったものは仕方がない。今となっては、メニュー表を開いている余裕も無い。咄嗟に、思いつきで口を衝く。
「麻祈さんと同じもので」
「承知しました。お飲み物は、いかがなさいますか?」
「このお水で。あの、また後で注文するかもですけど」
次いでシノバは、麻祈に対して控える姿勢を固めた。
そして数秒経ち、彼がため息をつく。観念したと言わんばかりに。
「……今年は芋の出来がいいんでしたっけ?」
「保障します」
「では、それをロックで」
「承知しました」
「楽しみです」
「応えましょう」
そして、シノバは退室した。麻祈は、それを見ない。紫乃は見るも何もなく、目を白黒させているだけで精一杯だった。
(芋をロック? ロックする―――固定する? 予約ってこと? うーん……)
「よかったんですか?」
「え?」
考え込んでいたところを釣り上げられて、紫乃はぽかんと口を開けた。
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