「ご無沙汰してしまいました。お元気そうで、なによりです」
「……そのお言葉、特に最後のそれを、お返し出来かねるのが悔やまれますな。どことなく、お窶れでいらっしゃる」
まるで爪先を挫かれたかのように、麻祈が立ち止まる。
その表情は、彼の背後にいる紫乃には窺えなかったが、シノバの反応が如実にそれを物語っていた―――とん、と乾いたガラスコップをタオルもろともバーカウンターに置いて、決まり悪げに微笑みを差っ引いたからだ。
次いで、顔から失くしたやわらかさの分まで加味した優しい口ぶりで、言ってくる。
「ちょうど今日のお勧めは、そんな段さんに、ぴったりの一品かと。なにせ、あなたのペットですからね」
(ペットが一品?)
目が点になる。まさか、文鳥の焼き鳥が出てくることはなかろうとも。
そして、点になり続ける。
両手を広げ、シノバが笑い声で喝采した。
「カングルァッツ! ユーヒットダジャックポット!」
横文字だ。それしか分からない。
しかも、それが続く。
「……おゥマイごゥッド」
麻祈の返事。
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