.いつしか夕日は、夜の到来を予感させるような翳りを含んでいた。住宅街に入っていくと、それはさらに夕餉の芳香を含んで、もったりと重たくなった。そのうち、どこからともなく流れてくる夕方のニュースの音をかぎ裂きにするかのような けたたましい盛り上がりをみせた女子中学生五人組と、路側帯で行き交った……半袖に衣替えになった不満が日焼けの話題になり、日焼け止めローションのコマーシャルに出ている俳優のゴシップに展開したところで、ついに彼女らの話を聞き取れなくなる。距離が離れたこともあるが、五人組の中で二対三に話題が分裂したのが大きい。お互いの話が混ざってしまって、聞き分けられない……きっとそのうち、またひとつになっては、はじけるのだ。絶え間無い波のようなそれを、紫乃はよく知っている。
(懐かしいな。あんな頃)
ちょっと笑ってしまっていた。それが聞こえたようだ。歩くまま、麻祈が視線を振り返らせてくる。
高揚した気分のまま、紫乃は弁解した。
「いえ、その。中学生だなぁって思って」
「ふぅん」
そのまま、会話が途切れた。
高揚した気分がしぼむ。しぼむまま、カゴバッグを抱え込んで、背中まで丸まってしまう。
「……ごめんなさい。つまんないこと言っちゃって」
「はい?」
戸惑ったらしく、麻祈がつんのめった。
そして、もう親指ほどの大きさまで遠ざかった中学生たちにまで視線を振り返らせて、思案顔を深める。
「―――……ああ。いや、俺の方こそ、勘違いさせてしまったみたいで。すみません」
「え?」
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