「俺、チュウガクセイってカテゴリーが、うまくイメージ出来なかったんです。チュウガクセイは、チュウ等ガク校のセイ徒で、中等ってことはセカンダリーのどれか? で、いいんですよね?」
「ええと、あの、わたしもセカンダリーがなんなのか分からないです……ごめんなさい……」
「あはは。なんだか頭が上手く回らないですよねぇ。日暮れだからかなぁ。おつむ使い切りましたってカンジで、ちゃんと喋ることができているのか自信がありません。俺」
またしても歩き出しながら、気さくに笑い飛ばす。
紫乃が分からないのは“セカンダリー”に関する知識がそもそも無いからなのだが、彼は自身の状態に論拠を置いて、知識の連結をスムーズに行えないほど疲れ切っているせいだと解釈したようだった。だからこそ、なお自分の不健全を思い知ったらしい。さも笑い事のように、へらへらと釈明してくる。
「こーいった妙ちきりんな行き違い、俺と一緒にいるだけ起こると思います。苛々することも多いでしょうけど、どうか大目に見てください」
「大目に、って……」
「日本に土着ほやほやの頃よりはマシになってると思うんですけどねぇ。我知らず周囲と食い違って、不愉快にすることが多くて。俺の評価―――空気を読まないって、お逢いしたこともない皆さんが口を揃えるのは、結構壮観ですよ。はは。あはは」
と、から笑いを強めてから、首をひねる。軽い調子で、肩を竦めた。
「なんだか口数も多いなぁ。気にしないでください。疲れて、蛇口が緩んでるんです」
「あの。麻祈さん。日本に土着って―――」
「“そんなことより”、」
と、断言して。
断言を終えれば、元通りに戻った。その笑みは朗らかさを強めて、声も強張りを無くす。
「すぐそこですよ。ほら。ノノクラ」
そうなると紫乃も、なにもなかった振りをして、こんなことしか言うことがない。
「民家をお洒落に建てました、みたいな外観ですね」
彼について、てくてくと近寄っていっても、印象は変わらなかった。
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