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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「あ、の……なんですか急にどんよりとして? だいじょ、大丈夫ですか? たんこぶ出来そうですか?」

「す、いません。ちょっとここしばらく、寝れなかったり、食事を摂れなかったり、欲求不満が。その。ごっちゃになって。はは」

 坂田へ向けてうつろに顔半分だけ笑いながら、ぐりぐりと壁紙に額を押しつけつつ、麻祈は必死に打開策を打算した。

(とにかく。一刻も早く食って出して寝ないと。最短時間で、それをこなすには―――)

 その一。坂田を追い出し、食って出して寝る。自前で。

(無理だろー。追い出すところからして無理なんだからフルコンプ俺は無理だろー。となると、)

 その二。坂田を追い出さず、食って出して寝る。部分的に自前で。

(どの部分を誰が持つんだよ。もー考えたくもねーよ)

 つまりは、その三。それしかない。

 麻祈は、どうにか立ち直って、坂田に提案した。

「……ええと……それでしたら、諦めるのでなく。また今度ということで、いかがでしょう? 料理」

「え?」

「今日は、俺と外食しましょう。坂田さんお手製の食事をご馳走になるのは、また今度ってことで。俺、どうせなら美味しいものを食べたいんです」

 彼女の唇に抗弁の予兆を感じて、布石を打つ。

「坂田さんにどれだけ腕前があっても、こんなとこじゃ本領を発揮できやしませんよ。ゴキの野郎に怯えた指で使い慣れない調理道具を扱うなんて、どんな怪我するか分かったものじゃないから、俺もヒヤヒヤするし。ね? 今日は、当初の約束通り、俺と外食することにしましょう。これなら誰も約束を破っていませんから」

 数秒は健闘したようだが、坂田は結局、頷いてきた。

 またひとつ手に入れた白星を、ほくそ笑み終えた詐欺師は安堵もろとも握り締めるのだが、そこにある杞憂の棘に皮を突かれる。その場しのぎが成功したってことは、失敗するその瞬間まで、シノギを削るシーンが続くという裏返しなんじゃあるまいな?

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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