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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「料理慣れした奴こそ、料理するのに不向きなんですよ。うちの台所、ほんと独房って言うか、日本人向きの単身者用で。俺ですら、菜箸の先っちょとか手首とかが事故に遭う回数に耐えられず、こまめな自炊を挫折したんですから」

 麻祈を見上げていた坂田が、はたと瞳の色の攻撃的な色彩を鎮火させて、ミニキッチンまわりを視線で周回した。肩を並べるくらい間際なので、その動線から考えが読める。まな板を置くとIHコンロが使用不可能となり、IHコンロを使用中はシンクくらいしか空きスペースがない。そのシンクさえ、鍋ひとつ洗うので一杯一杯のしょぼいサイズである。生ゴミを溜める三角コーナーさえ常設できない。

(ま。狭さそのものは、蓋した洗濯機とか電子レンジの上に調理スペースを拡張すりゃいいんだけどな。一個しかないコンロは、加熱と余熱を使い分けて、鍋敷きとコンロをローテーションさせれば問題ない。まな板は、シンクに橋するみたく渡しちまえば、そのまま具材を切り分けていけるし)

 とまあ、幾らでもアドバイスは浮かんだ。

 だとしても、坂田の夕食への宣戦布告に不戦勝を“くれてやれる”チャンスこそ逃す手はない。麻祈は、逃げ道を逃げる建前を、坂田へ唆し続けた。

「もちろん俺だって、坂田さんのお母さんやお姉さんの褒め言葉を疑っちゃいませんよ。坂田さん、きっと料理上手なんだと思います。でも、それって自宅での話でしょう? こんなところじゃねぇ……陸(おか)に上がった河童って諺もありますし。というわけで、残念ですけど、」

「いいえぇ! そんなのじゃ諦めたりしないんだから」

 言いながら、後ろ頭の髪留めを直して、肩丈の髪をひとつ束にする坂田。

 そのあらわになった耳朶に、そっと耳打ちする。

「正直言うとね。ゴキブリ来るんです。その台所。おいしいものを時間をかけて作ると、特に」

 ぴた、と坂田が硬直した。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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