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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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.  バスの昇降ステップに乗り込む途中に、歩道に立ったままの麻祈から、棒読みを遂げてくる。

「さようなら。おやすみなさい」

 紫乃は、返事をした。

「はい。さよなら……おやすみなさい。麻祈さん。―――それじゃ、また」

 麻祈は項垂れて、無言を保った。

 それを責めることはできない。

   土壇場になって痛感することになった卑怯な狡猾さは、身から出た錆のようなもので、それだけに直視するには耐えがたかった。二人はどちらともなく顔を背け合い、照明のぼけたバスの座席と、舗装が欠けたままのさびれた歩道へと別れた。

 どことなくスプリングがいかれたクッションに、落ち着かないまま尻を預けて、紫乃は窓から彼を探した。頭上にある蛍光灯のせいで逆光が窓硝子にはね返り、通路を挟んで反対側の席にいるくたびれたサラリーマンしか見えなかったけれど。

 思い出す。今になって思えば、としか言いようがないことを。

(本当に聞きたいことを、聞けなかった)

 誰かを助けるためになら、あんなにも迷い無く、手を差し出すくせに―――

(わたしからの手は、どうして弾いたの?)

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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