忍者ブログ

きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

現在、新しいコメントを受け付けない設定になっています。


,   見るだに、坂田が慌て出す。巣穴から出たプレーリードックを思わせる様子で、ぴんとした背に自らせっつかれたように目をしばたいていた。なにより、野生動物のように瞳が正直だ。割り感がどうかしたのかと、魂胆から窺っている。だけ。

 だからこそ苛立ちが加速する。

「俺が出して当然だとは思わなかったんですか?」

「思いませんよ! そんな!」

 坂田は声を跳ねさせて、実際につま先でも伸びあがってみせた。

「わたしは麻祈さんと食事を楽しみに来たんです。麻祈さんに食事を奢ってもらいに来たわけじゃありません」

 言ってくる。まるで、佐藤のようなことを。佐藤でもないくせして。

 麻祈は、財布も小銭も一緒くたにポケットへとねじ込みながら、唇を曲げた。

「そうですか。でしたら、どうぞ。ご勝手に」

 そこにきて、坂田の黒瞳が、その髪の色よりも深い濡羽色を滲ませたのが分かった。迷いを湿気らせた曇りだ。急転直下に不愉快になっていく麻祈の振る舞いに戸惑い、態度を決めかねているようだ。

(さっさと決めてくれ。なんでもいいから)

 愛想を尽かすのでも、逃げ出すのでもいい。疲れ切った身体は次なる休憩として睡眠を欲しているし、院内ゴシップ的にも路上でぐずぐずと立ち尽くしているのは褒められたものではない。

 それなのに、坂田の双眸は見つめるほど、彼女から逸らされることはないのだろうと思えてくる。

 その予感にこそ耐えられず、麻祈は坂田に背を返した。

拍手[0回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カテゴリー

プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

忍者カウンター