. 道路の路肩に錆びた標柱を突っ立てただけのバス停留所に到着してから、徒歩もだんまりも終わった。話題を出してくれたのはバスが到着するまでの坂田なりの気遣いだったのだろうが、余計なことを喋る都度、気が滅入る。受け取る余裕が懐に無いことを謝罪するしかなかった。
バスが到着すると、そのどれもが終わった。
帰宅する。いつものようにひとりで、ただし今は古傷を疼かせながら。
そして今日のそれは、足の付け根や上半身の痛痒ではなかった。
過去からの声音に、鼓膜を炙られていた。
それが嫌だ。
「―――ああ畜生、いやだいやだいやだい」
やがるぜ!
うわ、いやがるぜ!
居やがるぜ!
嫌がるぜ!
ヤガる
い
「やだいやだいやだ―――」
埋葬しきれたものではない。呟いても呟いても。
だからいつもの終止符で見限るのだ。
「めンどくせェナaあ」
こうして麻祈は、今日も反吐を終える。
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