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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「このへんとか、這い上がられた経験、あります?」

 言ってくる。紫乃の手を、棒の先で軽く突いたまま。

 悪ふざけだ。負けるわけにはいかない。連想は続いてしまうとしても。

 言い返してやる。

「いいえ」

 もっと言い返す。そのはずだった。

 小指の付け根の感触に動き出されて、言葉が散った。這い上がってくる―――

「このへんは?」

 手首。肘。二の腕。半袖の袖口―――の、中。

 肌の外ではなく、内側のふかいところが粟立った。悪寒とは異なる生温かい戦慄に、今までにないような恐怖を覚える。たまらず紫乃は、ばっと腕を胸倉に引き戻した。その場からも飛び退いて、片腕を抱きしめる。さすってみると、知り尽くしている自分の腕でしかないのだけれど。

 だからこそ寸前の感触が気味悪い。それを植えつけてくれた張本人は、こわごわと見上げられた途端にばつの悪さが芽生えたようで、両手を降参のポーズに掲げていた。持ったままだった菜箸をミニキッチンに引っ掛け直して、それでもまだ紫乃が牽制し続けているのを見て、微苦笑を明確な苦笑に変える。

「ね。やめときましょう。今のだけで、想像するのも嫌になっちゃったでしょ? 俺だって、袖口から脇の下にインされてからは、もう懲りちゃって、」

「やめません」

 告げる。

 より甘言を突っぱねるべく、紫乃は麻祈に背を反した。

「諦めません」

 言い終えると、ひどく惨めな思いがしていた。

(麻祈さん。それだって、まるごと忘れちゃってるのかな……)

 ため息は、つかずに済んだ。

 パン! と、音がはじけたからだ。前触れなく、机を下敷きで叩いたような。

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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