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きみを はかる じょうぎは ぼくに そぐわない

 本作品は書下ろしです。また、この作品はフィクションであり、実在する個人・地名・事件・団体等とは一切関係ありません。


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「そっちこそ、そーやってイチイチ台無しにしてくれんのってマナー違反なんすけど。マジ空気読めよ。あっちじゃどうだか知りませんけど、アンタこっちに来て何年なわけ?」

 何年だろう。何年だったろうか?

 売り言葉の買い言葉に、真面目に答える気もなかったが。

 それでも意識すれば、年月はあっさりと暗算できた。四捨五入して十年。自分でも、もうそろそろ習得していてもいいんじゃないかと思えた―――和、と称される日本の妙技を。

 それは才覚でなく技術だ。協調性だけでなくテクニックを要する。それは分かっていた。はずだが。

 顧みる。

.
(客寄せパンダの役割は、パンダらしく振舞い、パンダを見たがっている客を寄せ続けること)

 そして、省みる。

 麻祈は、陣内の手首からビールグラスを持ち上げた。それを机上のコースターへと移しつつ、詫びておく。

「そうですね。気をつけます。ありがとう」

 険呑に鼻を鳴らして灰皿を掴む陣内から、一向に片付かない己の小皿の料理群へと視軸を切り替え、麻祈は手元もフォークに交換した。噛んでも噛んでも塩とあぶらの味しかしない肴の群を前に、食指が動こう筈もなかったが。

「吸わして戴いてイイっすかー?」

「いーともー!」

 才能あるコメディリリーフによって、寂(せき)とした空気はみるみる盛況と秩序を回復させていった。

 振る舞い、会話、アイコンタクト―――それぞれに、求められては応じていく自分自身を、どこか遠くから眺めながら。

 麻祈は、同じくらい遠くにある疑問を、じっと内面で見続けていた。解けないまま、今また上乗せされてしまった命題を。

 俺は、どうして日本で医者になろうと思ったんだっけ?

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プロフィール

HN:
DNDD(でぃーえぬでぃーでぃー)
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/09/09
職業:
自分のHP内に棲息すること
趣味:
つくりもの
自己紹介:
 自分ン家で好きなことやるのもマンネリですから、お外のお宅をお借りしてブログ小説をやっちゃいましょう(お外に出てもインドア派)。

 ※誕生日は、DNDDとして自分が本格的に稼働し始めた日って意味ですので、あしからず。

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